【出産で休むのは欠席なのか?】
全国の議会で近年話題になっていますが、
世田谷区では2015年になり、
全国市議会議長会(世田谷区も加盟)で定める「標準市議会会議規則」の改定を参考に
世田谷区議会会議規則
第1章 会議
第2条 2 議員は、出産のため出席することができないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる。
第2章 委員会
第82条 2 委員は、出産のため出席することができないときは、日数を定めて、あらかじめ委員長に欠席届を提出することができる。
と、それぞれの条に2項が追加となりました。
未だ適応された機会がないため、実際世田谷区でどのような扱いになるかは未知数ですが
この条例改正が起きる前に、議員になってから出産をした江口じゅん子議員(日本共産党)は、
当時、単なる欠席扱いとなったようで、こういった理由であっても
当該議員の言う【公務怠慢ポンコツ議員】扱いを受けることになっていました。
【議員には産休もない】
出産が欠席理由として多くの自治体で追加されたものの、
一方で労働者であれば正規/非正規といった雇用形態を問わず
労働基準法第65条により
産前:6週間(多胎妊娠の場合は、14週間)
産後:8週間(医師の診断次第で6週間)
の休業制度が存在しますが、
議員には、そうした休業制度は存在しません。
税金から収入を得ている議員が休むことを推奨するのか!とお叱りを頂くこともあると想定されますが、
その場合は、単に休業中の報酬を差し引けば、制度的な矛盾も解消されます。
そもそも、これだけ少子化や出生率の低下が叫ばれており、
それらを話し合う議会でも「お前が結婚しないのか!」「お前が産め!」とヤジが飛ぶにもかかわらず
明らかに出産をすることにハードルを高く設定しているのも議会そのものです。
【欠席議員にはがん患者、子どものインフルエンザ等もいる】
私の知る限りでも、中塚さちよ議員(立憲民主党)や村田義則議員(共産党)は大病を患い、
他にもお子さん(3歳未満)のインフルエンザで早退をされた方や、
それぞれの方にどうしようもない事情があった場合が多く含まれています。
がんサバイバーは、ポンコツですか?https://t.co/EpaJTUrKw9
— 中塚さちよ 立憲民主党 世田谷区議会議員 (@nakatsukahelper) 2019年3月19日
【欠席批判よりも、変えるべき制度がある】
欠席で起こり得る一番大きな問題は、
①質問時間を放棄しなければならない
②議決権が行使できない
③委員会の際は、議論に参加ができない
の3点に集約されると考えています。
逆にそれ以外については、休んでいようが座っていようが
議会棟に来て控室に引っ込んでいようが本質的には影響がありません。
(現に、今回欠席者批判をしている当該議員は、本会議中や予算/決算委員会中に
頻繁に控室に戻っており離席していますが、離席による議事進行への影響は
議事進行役の正・副議長/正・副委員長、会議録署名議員以外にはありません)
①「質問時間を放棄せざるを得ない」問題については、
国会や都議会でも実施されている”文書質問制度”を導入すれば解決されます。
以前、議会事務局に確認をしたところ、世田谷区では国会や都議会とは異なり、
各議員が毎議会質問が可能な制度になっているため導入しないとの結論になったと伺いましたが、
今こそ、少なくとも欠席の代用としては導入をする必要があると考えます。
②「議決権が行使できない」問題については、
諸外国ですでに導入されている、電子投票を導入すれば解決されます。
こちらの記事中にあるように、スペインの国会では遠隔であっても
”出席”とみなして、議決に参加できるようです。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/13557.html
区役所のリモートワーク等の議論も行なわれる中、
区議会の議決についても入院や産休・育休等、
どうしても登庁できない時の対策も、今一度見直す必要があると考えます。
③「委員会の際は、議論に参加ができない」問題については、
ほぼ発言しない議員、関連性の低い発言しかしない議員もおり
そもそも出席していること、その一点を評価すること自体が間違っていると考えます。
(出席した上で、どれだけ、何について発言をしているかの方が重要)
議員の仕事は、政策立案と行政のチェック機能であり、
皆勤賞の健康優良議員よりも、投票したひとりひとりの思いを受けて
この街の未来をどう描いていくか、そのために何に予算を投じるか/削減するかを
実現することの方が重要であると考えます。
【欠席批判は、人権侵害も含まれる!】
私自身も、今1歳になる子どもを共働きの妻と共に育てながら仕事をしており
今回の選挙の結果、区議会議員を続けることになっても続けられなくなっても
今後どんな仕事であっても子どもが理由の欠席も生じることが予想されますが、
そういった人でも働ける環境を整えることの方が、
より困っている人に寄り添う当事者意識のある欠席した議員を批判することよりも必要なことではないでしょうか。
今回この件を取り上げた 当該議員は、今のところ
健康で子どももおらず、介護の必要もなく妊娠出産の当事者ではない男性という、
現在の中高年男性に最適化された議会に於いて「最も強い立場の人間」ですので、
様々な事情を理解できず、全ての議員が自らと同じように働くべきであるという主張が強く見て取れることからも、
中高年・男性至上主義者による、前時代的な評価を下されたことへの反論
という形でこの記事を執筆している次第です。
これまで、当該議員に対しては、議会への長期欠席中の資格受験の実績等、その後の辞職勧告決議の全会一致等、
周りの議員から様々な評判が聞こえてくるものの
そのべとも無駄な税金を減らす等、主張に近い部分はあり、
無駄遣いを少しでも減らしてくれるものと考えておりましたが、
私自身は、男性・秘書出身・中高年の名誉職ではない、
様々な経歴・バックグラウンドの議員による多様性が真の区民代表になると考えるのに対し、
当該議員はマッチョイズム・マチズモ(男性優位主義)を信じ、
子育てや介護にコミットしない、昭和の中高年男性の働き方が必要であり、
それらを今後も前提とすべきであるとの主張のようですので、
平成が終わる今、目指す社会像が180度、異なることに改めて気付かされました。